「ビジネスに関わる行政法的事案」第40回 ハラスメントのインフレ化!?―ロジハラ、エモハラ、ズムハラにオワハラ

第40回 ハラスメントのインフレ化!?―ロジハラ、エモハラ、ズムハラにオワハラ

神山 智美(富山大学)

 

はじめに 

「〇〇ハラって知ってる?」と尋ねられて、ほぼ連想クイズだなと思うことが多い昨今です。ハラスメントの種類が多くなりすぎて、インフレ化を生じているようですね。あまり増えすぎてしまうと、深刻さが薄まっていくようで心配しております。

さて、今回は、「ロジハラ」「エモハラ」と「ズムハラ」「オワハラ」という言葉を筆者は知りましたので、早速にそれらについて記したいと思います。

 

どんどん種類が増えるハラスメント

ちなみに、以下のようなハラスメントが生成されてきているようです。正確には、ハラスメントして認識され「名前が付けられてきている」、つまり注目されはじめているということでしょう。セクハラパワハラは代表的なものとして定着しており、それに類するものという位置づけのようです。なかには人種や血液型による差別意識に基づくものもあるようで、これはハラスメントというくくりにすべきものかどうか悩みます。

 

セクハラ(セクシャルハラスメント)系

ジェンダーハラスメント

(ジェンハラ)

「男らしさ」「女らしさ」をキーワードにして性別による差別を行うこと。
告白ハラスメント

(コクハラ)

その気もないのに相手に告白して不快な思いにさせること。
セカンドハラスメント

(セカハラ)

セクハラを訴える被害者に、逆に弾圧や誹謗中傷を行うこと。
ゼクシャルハラスメント

(ゼクハラ)

「ゼクシィ」という総合結婚情報誌をもじったもので、おつきあいしているときに、必要以上に相手に「結婚したい」と伝えること。
SOGIハラスメント(ソギハラまたはソジハラ) 性的マイノリティに対する差別や偏見、および本人の意図せぬアウティングを行うこと。
チェリーハラスメント

(チェリハラ)

性経験がない人に対して、偏見を持ったり誹謗中傷したりすること。
マタニティハラスメント

(マタハラ)

妊娠中や出産を終えたばかりの人への嫌がらせ行為。
ラブハラスメント

(ラブハラ)

相手の恋愛経験をしつこく聞く行為。

 

パワハラ系

アカデミックハラスメント

(アカハラ)

教員等がその立場を利用して学生に嫌がらせをする行為。
アルコールハラスメント

(アルハラ)

お酒を飲むよう強要する行為。
エアーハラスメント

(エアハラ)

権力のある人等が、当該職場のエアコン設定温度などを自分の好きなように決定してしまうこと。
カスタマーハラスメント

(カスハラ)

お客であるという立場であることを理由として、店員や店に対して無理難題を言うこと。
カラオケハラスメント

(カラハラ)

歌を歌うことが苦手な人に対して、無理やり歌わせる行為。
就活終われハラスメント

(オワハラ)

企業の採用担当者が、学生に対して就職活動を終了して自身の会社への就職を促す行為。
パタニティハラスメント

(パタハラ)

パパのマタニティ支援活動を防止する行為、つまり、男性の育児参加制度や育休取得を妨害する行為。
ペイシェントハラスメント

(ぺイハラ)

患者の立場を利用して、医師や看護師等に対して高圧的な態度をとる行為。
モラルハラスメント

(モラハラ)

言葉や態度により相手のパーソナリティを貶めて精神的苦痛を与える行為。
不機嫌ハラスメント

(フキハラ)

不機嫌に振る舞って見せることで、周囲の人をコントロールして、不快にさせる行為。

 

その他

オンラインハラスメント

(オンハラ)

インターネット上で、誹謗中傷する行為。
ズームハラスメント

(ズムハラ)

通話ソフトZoomを活用してのハラスメントをさす。Zoom操作が苦手な人への嫌がらせや、Zoomを介して上司などが立場を利用して私生活を見せるように迫る行為など。
ソーシャルハラスメント

(ソーハラ)

SNSのソーシャルメディアから仲間はずれにしたり誹謗中傷をしたりする行為。
ブラッドタイプハラスメント(ブラハラ) 血液型占い等のイメージで、相手の性格や人柄を判断する行為。(いわゆる「B型差別」が典型。)
レイシャルハラスメント

(レイハラ)

人種や国籍で、相手に対して嫌がらせを行うこと。
ハラスメントハラスメント

(ハラハラ)

必要以上に「これはハラスメントだ」という行為。

 

ロジハラ(ロジカルハラスメント)とは?

ロジハラとは、ロジカルハラスメントのことで、正論を振りかざして、相手を追い詰める人のことを指します。正論を押し付ける人という表現もなされています。

ただし、①どこがいけないの?ロジカルでないことを押し付けられるよりはずっとまし、②これがハラスメントになるのであれば、おそらく皆が一定程度しているし、されてもいるのではないか?等という疑問もわいてきます。

 

以下に、ロジハラとされる事例を挙げておきます。(トイアンナ「正論を振りかざす『ロジアハラ』への対処法」マイナビマイウーマン等を参考にしました。)

 

 

上司からのロジハラ

「どうして相手によって態度を変えるの? スタッフ同士仲間なんだからみんな平等に接しないと、他の人に失礼だよ」と、現場の事情も踏まえずに公平さを要求される。
「このミスは誰が起こした? 〇〇さん、どうしてできなかったのか説明して」と、上司は理由を確認したいだけのつもりでも、状況に配慮の無い発言がミスをした人を精神的に追い詰めてしまう。
 

 

恋人からのロジハラ

「私はあなたへの不満が3つあります。1カ月以内に是正されなければ、お別れします」と一方的に通告する。
「君の金遣いの荒さは結婚した場合、支障をきたすと思う。僕は君と同じくらいの年収だけど、〇万円を毎年ためているよ。なんで君にはできないの?」と、奨学金や親への仕送りなど、事情を踏まえずに相手の生活設計に口出ししてしまう。
 

友人からのロジハラ

「いつまでそんな恋愛してるの? そんなことだから、結婚できないんだよ。結婚したかったら〇〇と△△をやって~……」と、望んでもいない解決策を押し付ける。
軽く愚痴ったつもりなのに「それってさ、〇〇ちゃんにも悪いところがあるよね?」と共感ではなく正論で返される。
ご近所からのロジハラ 生垣にバラを用いた。とげのない品種しか植えていないのだが、ご近所から「通学路にもなっているしバラは危ない」と指摘されて言い返せなかった。

内容としては、パワハラ(パワーハラスメント)やモラハラ(モラルハラスメント)に似ていると思われるものもありますね。

 

ロジハラってハラスメントなの?ハラスメントになる場合はどういう場合なの?

ロジハラをする人の特徴は、①プライドが高く、正論で周囲を論破することで自分の優秀さや正当性を確かめている。またそうすることで、自分が優秀な人間だと周囲に示したいと考えている、②負けず嫌いの人が多く、相手を論破したがる、③相手の意見に共感する能力に欠けていることが多いので、相手が何を言っても攻撃の手を緩めず、他人の意見を絶対に聞き入れない、④①から③はコンプレックスが強いことの裏返しのようである、⑤自分の意見が正義だと勘違いしていることが多く、本人は「相手に正しい考えを教えてあげなくては」という親切心と使命感に燃えていたりする。

①から⑤を読むと、ある意味残念な人のようでもありますが、「物事には正解がある」と思っている人(ロジカルシンキングに頼っている人)が、ロジハラをしてしまいがちのようです。また、⑤等を考えると、世話焼き体質(おせっかい体質)の人であれば、誰しもロジハラといわれるような行為をしてしまうのかもしれないとも思います。

つまり、ロジハラにならないようにするには、「正論」といえることを展開するにも、時と場所と相手の状況に合わせてということが問われているのですね。

ここまで書いてきて、わたしの娘への小言もロジハラかもしれないと思いました。娘が就職先を決めようとするとき、自家用車を購入しようとするとき、それなりに意見が合いません。そのときに、理由を言ってしまうのです。長く生きている分、どうしてもわかっていることが多いと思うからでしょう。それが、度が過ぎると、「それはわかっているけど、〇〇で働きたいの」とか「△△に乗りたい」という娘の要望を覆させてしまうことになるのでしょうね。(幸い、うちの娘たちは私の小言くらいにはびくともせず、己の希望を第一に貫きます。)

 

ロジハラの反対のエモハラ(エモーショナルハラスメント)って?

「エモい」という表現を聞かれたことはありますか?英語の「emotional」を由来とした、「感情が動かされた状態」、「感情が高まって強く心が揺さぶられた状態」などを意味する若者言葉です。私の感覚てきなものですが、昨今の「やばい」と同様に、良くないことではなく良いこと(好意的なこと)に対して用いられているようです。

ところで、エモハラ(エモーショナルハラスメント)の被害に遭ってらっしゃる管理職の方々は少なくないのではないでしょうか?、もしくは、この部分を読まれたら、部下のいわゆる「逆切れ」ってこのエモハラかも?と思われる方もいらっしゃるように思います。

行政の現場からの相談にも、この「エモハラ」かと思われる事案が少なくありません。なかには、「部下を叱るのが怖くなった。」「『パワハラだって訴えますよ。』と脅された。」「訴えられると自分の失点なので怖くて指導すらできない。」等とおっしゃる方もいらっしゃいます。適切な指導ができない、受けられないというのでは、お互いに損ですね。

なかでも、「『パワハラだって訴えますよ。』と脅された。」という声は、組織として深刻に捉える必要があります。というのも、この組織では、訴えるがあること自体がマイナスと捉えられるというおそれがあるからです。さらに、それが「パワハラなのか、そうではないのか」を正確に判断できる組織であるとは思われていないので、この上司は不安に感じていると思われます。

 

 

ズムハラとオワハラについて

最後に、ズムハラオワハラについて述べておきます。

ズムハラは、通話ソフトZoomを活用してのハラスメントをさします。Zoom操作が苦手な人への嫌がらせや、Zoomを介して上司などが立場を利用して私生活を見せるように迫る行為などです。前者の例としては、「共有資料はまだなの?いつまでもたもたしてるの?」「まだ慣れないの?」「声が小さいよ、ちゃんとマイク使って!」等と繰り返しなじる行為のことです。後者の例としては、自宅や職場からZoomを使って会議等に出席している人に、「もっとおうちの中を見せてよ」「部屋散らかってるね。頭の中も散らかってるんじゃないの。掃除しないの?!」等と言ったり、「オンライン飲み会だから、帰りの心配もないし都合つくでしょう。全員二次会まで参加。」等と出席を強要したりすることです。オンライン飲み会の二次会は、抜けどきがわからなくて困るという声も聞きますね。

 

結び

「『パワハラだって訴えますよ。』と脅された。」という声は、組織として深刻に捉える必要があります。というのも、この組織は、訴えるがあること自体を大きく取り上げる(マイナスと捉える)組織であるおそれがあるからです。さらに、それが「パワハラなのか、そうではないのか」を正確に判断できる組織であるとは思われていないので、この上司は不安に感じているわけですね。

訴え自体は、被害を感じた人が抑え込まれるよりも口にできる組織であった方が望ましいです(もちろん、パワハラがない組織が最も良いですが。)。そのうえで、組織として、それが「パワハラなのか、そうではないのか」を正確に判断できるようになることが重要です。

こうした視点で、インフレ化するハラスメントと付き合っていきたいと思います。

 

(参考)

「テクハラ」「カラハラ」「ブラハラ」「オワハラ」…新種のハラスメントが大量発生中!あなたはいくつご存じですか? 2016年6月28日 野崎 大輔

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48991

 

2020年最新版!52種類も該当するハラスメントの全貌を徹底解説!2020年01月14日

https://mato.ma/column/3763

 

てつたま(Philosophy Egg)「逆ロジハラことエモハラについて考えてみた」最終更新2020年5月26日

https://tetsu-tama.com/coloria/

 

ビズアル(bizual):「ロジハラ」ってどんなこと?|正論を押し付ける人の特徴とロジハラの対処法を徹底解説!!2020年08月09日

https://bizual.jp/%E5%B0%B1%E6%B4%BB%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%83%8F%E3%82%A6/294/

 

マイナビマイウーマン:トイアンナ 「正論を振りかざす『ロジハラ』への対処法」2020.09.20

https://woman.mynavi.jp/article/200920-5/

 

創業手帳:「コロナ禍で急増!zoomハラスメント「ズムハラ」の実態と企業の対策方法」最終更新日:2020年10月7日

https://sogyotecho.jp/zoomharassment/

 

KUMORI BLOG’S 「【御近所ロジハラ】正論だと思うよ。悪意はないと信じたいよ。でも普通それ言う?」2020年10月16日

 

以上