「ビジネスに関わる行政法的事案」第16回:インターネットによる医薬品販売と診療の提供(1)

第16回:インターネットによる医薬品販売と診療の提供(1)        神山 智美(富山大学)

 

はじめに

風邪をひいたときにお薬をもらうのはどこですか?お医者に行って診療してもらってお薬をもらう人(処方箋をもらってお薬を別途いただく人を含む)も、薬局で購入する人もいらっしゃるでしょう。お医者に行く時間がない時には、市販薬を手軽に購入できるのは便利ですね。

 

ところで、医薬品のインターネット販売を利用したことはありますか?

ところで、医薬品のインターネット販売を利用したことはありますか?「ケンコーコム」(図1参照)や「爽快ドラッグ」というサイトをご存知ですか? いずれもRakuten Direct株式会社(楽天株式会社の100%連結子会社)が運営している、健康食品・医薬品などの通信販売サイトです。

医薬品とは、医薬部外品とは?

通販では、第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品が購入できます。といっても、第一類、第二類および第三類はどう違うのかよくわかりませんよね。また、医薬部外品という表現もよく目にしますね。法律上はどういうものなのでしょうか?

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称「医薬品医療機器等法」または「薬機法」という。従来「薬事法」と呼ばれていた。)2条1項、2項には、医薬品、医薬部外品がそれぞれ定義されています。いずれも機械器具ではないもので、医薬品は人または動物の「疾病の診断、治療又は予防に使用される」もの、医薬部外品は「人体に対する作用が緩和なもの」、および人または動物の「保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除」を目的とするものと規定されています。

 

〔医薬品医療機器等法〕

(定義)

第2条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

一 日本薬局方に収められている物

二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(略)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)

三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

2 この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。

一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(略)であつて機械器具等でないもの

イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止

ロ あせも、ただれ等の防止

ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛

二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(略)であつて機械器具等でないもの

三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(略)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

 

第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品とは?

医薬品は、殺虫剤等を除けば、大まかに以下のように分類されています。

第一類医薬品は、一般用医薬品としての安全性評価が確立されておらずリスクが不明のもの、および日常に支障を来す副作用のおそれがあり、特に注意が必要なものです(図2参照)。

それに対して、第二類医薬品は、日常生活に支障を来す副作用のおそれがあるものです。第三類医薬品は、副作用などで安全性上多少の注意を必要とするものです。一部のビタミン剤、整腸剤や消化剤等が該当します。

これらを踏まえてインターネット購入サイトを見てみると、風邪薬や鎮痛薬でも、第一類と第二類の購入方法には少し違いが確認できます(図3参照)。

 

 

医薬品販売規制の見直し―2013年薬事法および薬剤師法改正

当時の薬事法(医薬品医療機器等法)現在のおよび薬剤師法が、平成25(2013)年に改正されました。そこでは、安全対策の強化や医薬品販売規制の見直し等がなされました。特に後者に関しては、第一類医薬品および第二類医薬品のインターネット販売が可能とされました。

ただし、第一類医薬品に関しては、これまでどおり薬剤師が販売し、その際は「年齢、他の医薬品の使用状況等について、薬剤師が確認する」、「適正に使用されると認められる場合を除き、薬剤師が情報提供する」ことが規定されています。つまり、インターネット販売であっても、薬剤師の情報提供および指導等が求められています(図5および図6参照)。

 

以下の条文の下線部に注目してみてください。第一類医薬品の販売に当たっては、「薬剤師に~させねばならない」と法的義務が明記してある(36条の10第1項、2項)のに対して、第二類医薬品の販売に当たっては、「薬剤師又は登録販売者に~させるように努めなければならない」と努力義務が明記されているに留まります(36条の10第3項、4項)。

〔医薬品医療機器等法〕

(一般用医薬品に関する情報提供等)

第36条の10 薬局開設者又は店舗販売業者は、第一類医薬品の適正な使用のため、第一類医薬品を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局又は店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(略)を用いて必要な情報を提供させなければならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。

2 薬局開設者又は店舗販売業者は、前項の規定による情報の提供を行わせるに当たつては、当該薬剤師に、あらかじめ、第一類医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させなければならない。

3 薬局開設者又は店舗販売業者は、第二類医薬品の適正な使用のため、第二類医薬品を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局又は店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に、必要な情報を提供させるよう努めなければならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。

4 薬局開設者又は店舗販売業者は、前項の規定による情報の提供を行わせるに当たつては、当該薬剤師又は登録販売者に、あらかじめ、第二類医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させるよう努めなければならない。

 

医薬品販売規制の見直しのきっかけ

―最二小判平成25年1月11日市販薬ネット販売権訴訟上告審判決ー

2013(平成25)年の医薬品販売規制の見直しのきっかけは、最高裁が、改正薬事法の省令(当時の薬事法施行規則)が第一類医薬品および第二類医薬品に係る郵便その他の方法による販売または授与(インターネット販売)を一律禁止にしたことに関して、新薬事法(2006(平成18)年改正法をいう)の委任の範囲を逸脱した違法なものであり無効であると判断したためです。

これをうけて厚生労働省では、2013年2月から、「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」を実施し、法改正に着手しました。その結果、前述のように第一類医薬品および第二類医薬品のインターネット販売が可能とされたのです。

 

セルフメディケーションの重要性

セルフメディケーション」とは、NPO法人・セルフメディケーション推進協議会によれば、「自分で自身の健康を管理すること」と説明されています。WHOによれば、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調(minor ailments)は自分で手当てすること」と説明されています。ちなみに、セルフメディテーションという用語は、セルフメディテーション税制という「所得控除」でもおなじみです(図7参照)。行きつけの薬局のレシートを集めてらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組(定期検診やインフルエンザワクチンの予防接種を受けている、その他)を行う個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。

1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、超えた額が所得から控除されて税金が還付・減額される従来からの「医療費控除」とこのセルフメディケーション税制のいずれを適用するかは納税者の選択によるものとされており、両方を利用することはできません。

インターネット販売に当たっては、販売者には、消費者によるセルフメディケーションが、上手になされるような環境整備が求められています。というのも、インターネット販売の場合は、消費者の自己判断に頼る部分が少なくなく、そこで消費者が陥りがちな誤診や誤用のリスクへの対処(消費者が求めたときには相談や指導に応じることができる体制)をインターネット購入がなされる時間帯(多くは24時間体制)に、確保される必要があるからです。

他方、私たち消費者も、簡単に手に入るようになった分、その安全性確保の責任は自分自身に課せられています。対面販売のときに受ける「服薬の仕方、諸注意等」を自分で説明書や注意書きから読み取らねばなりません。インターネット販売は、大きな文字で、毎食後服用のためにお薬パッケージを作ってくれて「毎食後に一袋」と書いてくれるような親切な調剤薬局ではないですから。

 

以上