「ビジネスに関わる行政法的事案」第34回:留学生の在留資格―留学生のアルバイトと在留期間

第34回:留学生の在留資格―留学生のアルバイトと在留期間     神山 智美(富山大学)

 

はじめに

今年の就職活動は、近年まれにみる厳しい状況のようです。新コロナ禍という事情により、企業説明会・採用試験は延期・中止になり、面接もリモート化しています。戸惑う学生も少なくないようです。

こうしたなかで、よりいっそう厳しい状況に置かれているのが日本に来ている留学生です。いろいろな留学生がいますが、卒業後(修了後)に日本で就業したい、起業したいという学生もいますし、在学中にアルバイトをしたいという学生も増えてきています。ただし、日本人の就職活動とは異なり、卒業までに就職先が決まらないと在留資格の延長をしなければ就職浪人(就職活動のための在留)ができません。今回は、こうした留学生のアルバイトや就労について考えてみたいと思います。

 

留学生が在学中にアルバイトするには

留学生も日本に在留する場合には、出入国管理を規定する入管法(正式名称:出入国管理及び難民認定法)の規定によります。入管法は、本邦(日本)に入国し、または本邦から出国する「全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備すること」を目的とする法です(1条)。

まず、留学生がアルバイトをするには、あらかじめ入管法19条2項により、「資格外活動の許可」を得ることが求められます。本学の留学生は、就学のためにはじめに日本に来る入国時に既にこの許可申請を済ませているようです。

この資格外活動の許可は、許可証の発行(図表1の右側参照)または旅券若しくは在留資格証明書に「許可」と証印することによって行われます(入管法施行規則19条4項)。この許可が発出された場合には、同法施行規則19条5項により、一週について28時間以内、夏休みなどの長期休暇のみ一日につき8時間までの労働が認められます(いずれも残業を含みます)。

 

なお、留学生のアルバイトでは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の規定するいくつかの職種には就くことができません(図表2参照)。就労した場合は留学生は違法行為をしたことになりますし、もちろん、雇用主も罰せられますので気を付けましょう。

 

わたくしの感触としては、日本に来る留学生は、クールジャパン(Cool Japan等の日本の文化が好きな学生が多いように思います。彼らは、ディズニーランドやUSJも、日本のアニメ文化も伝統文化も好きなので、しょっちゅう国内旅行に出かけます。そのための資金も必要なのでアルバイトしているというケースが少なくないようです。

ちなみに、学生や院生のアルバイトについては、賛否両論あると思います。生計を支えるためにアルバイトをやむを得ずせねばならない場合は別として、学生時代に「暇だったので」「入りたいサークルも打ち込むべき勉強もなかったから」というケースには、「貴重な時間をどぶに捨てているようなものだ」という批判もあるでしょう。他方、「生の社会に触れる勉強になる」という積極的な肯定意見もあるようです。

私が実際に出会った(日本人学生の)ケースを以下に紹介します。学生Aはアルバイトを掛け持ちしていて、講義に遅刻したり、出席していてもぐったりしています。理由を尋ねると、「アルバイトの掛け持ちがしんどいから」と答えます。では、アルバイトを減らせないかと尋ねると、「自動車のローンの返済に追われている」と答えます。どうしても自動車が必要なのかと尋ねると、「アルバイトに行くために必要だ」と答えます。この負の連鎖をどこで断ち切るべきか迷う事例でしたが、結局、Aは無事に4年間で卒業でき、アルバイトしていた企業に就職内定をいただいたので、将来につながったという点で一定の成果があったともいえます。

 

〔入管法〕(出入国管理及び難民認定法)

第19条

2 出入国在留管理庁長官は、別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者から、法務省令で定める手続により、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動の遂行を阻害しない範囲内で当該活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことを希望する旨の申請があつた場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。この場合において、出入国在留管理庁長官は、当該許可に必要な条件を付することができる。

 

〔入管法施行規則〕

第19条 

4 資格外活動許可は、別記第29号様式による資格外活動許可書を交付すること又は旅券若しくは在留資格証明書に別記第29号の2様式による証印をすることによつて行うものとする。(以下略)

5 第19条第2項の規定により条件を付して新たに許可する活動の内容は、次の各号のいずれかによるものとする。

 一週について28時間以内(留学の在留資格をもつて在留する者については、在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは、一日について8時間以内)の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動(略)

 教育、技術・人文知識・国際業務又は技能の在留資格をもつて在留する者(略)が行う一週について28時間以内の別表第一の二の表の教育の項、技術・人文知識・国際業務の項又は技能の項の下欄に掲げる活動(略)

三 前各号に掲げるもののほか、地方出入国在留管理局長が、資格外活動の許可に係る活動を行う本邦の公私の機関の名称及び所在地、業務内容その他の事項を定めて個々に指定する活動

 

卒業後の就労が決まったら

外国人の日本での在留資格はいくつかありますが、そのうち就労活動に制限がないのは、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4種類です(同法2条の2第2項)。原則として文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在の5種類は、就労が認められません(同法2条の2第1項)。

そのため、次に挙げる職業類は、在留資格に定められた範囲で就労が認められます(同法2条の2第1項)。外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転筋、介護、興行、技能、特定技能、技能実習です。

法務省のウェブサイトでは、「一般の事務所での雇用のケースが多いと考えられるもの」として、次の4つが例示されています。順に、「技術」領域でコンピューター技師、自動車設計技師、「人文知識・国際業務」領域で通訳、語学の指導、為替ディーラー、デザイナー、「企業な転勤」領域で企業が海外の本店又は支店から期間を定めて受け入れる社員(活動は、「技術」、「人文知識・国際業務」に掲げるものに限る。)、「技能」領域で中華料理・フランス料理のコック等です。

 

〔入管法〕

第2条の2 本邦に在留する外国人は、出入国管理及び難民認定法及び他の法律に特別の規定がある場合を除き、それぞれ、当該外国人に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格(略)又はそれらの変更に係る在留資格をもつて在留するものとする。

2 在留資格は、別表第一の上欄(略)又は別表第二の上欄に掲げるとおりとし、別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者は当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる活動を行うことができ、別表第二の上欄の在留資格をもつて在留する者は当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる身分若しくは地位を有する者としての活動を行うことができる。

 

このような業種に就労が決まれば、いわゆる「留学ビザ」から「就労ビザ(在留資格)」への変更許可申請手続をする必要があります(入管法20条)。これも外国人に固有の在留資格の手続きのことで、在留資格変更許可申請書と必要な書類一式を留学生の住んでいる地域(留学生の住民票がある地域)を管轄する入国管理局・支局に申請します(同法20条2項)。新卒者が4月から就職できるように、入国管理局では例年12月から受け付けているようですので、4月入社に間に合うように、早めに申請しましょう。なお、外国人は、在留期間の満了後も、当該処分がされる時まで、または、在留期間後2カ月を経過する日終了までは日本国内に在留できます(同法20条6項)。

また、昨今では、新コロナ禍の影響で、就職内定をもらった後に内定取り消しをされるという悲惨な事例もありました。こうした場合には、「特定活動」として申請すれば半年間の在留資格を得ることができますし、一定の要件を満たせば少なくとも1度の更新は認められますので、1件間は日本に在留できます。不法滞在にならないように適切に在留資格を更新しておくことが求められます。

 

〔入管法〕

第20条 在留資格を有する外国人は、その者の有する在留資格(略)を受けることができる。

2 前項の規定により在留資格の変更を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留資格の変更を申請しなければならない。(以下略)

6 第2項の規定による申請があつた場合(略)において、その申請の時に当該外国人が有する在留資格に伴う在留期間の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、当該外国人は、その在留期間の満了後も、当該処分がされる時又は従前の在留期間の満了の日から二月を経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は、引き続き当該在留資格をもつて本邦に在留することができる。

 

結び

「外国人の人権」というのはおかしな表現です。というのも、人権というものは、「人間が人間である以上、生まれながらに当然持っている基本的な権利(有斐閣法律用語辞典 内閣法制局法令用語研究会 編)」のことですから。勤労は権利なのか義務なのか悩ましいテーマですが、(就労を希望する者への)就労の権利というものは人権として認められていくべきだと考えています。ただし、国家という区分が存在するため、やむを得ず何らかの制約が課される場合があり、それが外国人(留学生)の在留資格や資格外活動許可等の問題となります。

多くの留学生が、日本で学んだ後に日本での就職を希望しています。こうした留学生の雇用の際には、法令順守に努めてゆきましょう。

 

〔参考〕

・法務省「出入国管理及び難民認定法関係手続」http://www.moj.go.jp/tetsuduki_shutsunyukoku.html

・厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください」

   https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/anteikyoku/gairou/980908gai01.htm

・行政書士・社会保険労務士永井弘行事務所ウェブサイト 「申請取次行政書士が『就労ビザ手続き』をサポートします」

http://www.office-nagai.net/

・朝日新聞DIGITAL 「内定取り消され、留学の在留資格も期限間近・・・どうすれば」 2020年6月4日15:00配信

   https://www.asahi.com/articles/ASN625HD2N4WUTIL04S.html

 

以上