「ビジネスに関わる行政法的事案」第13回:リユース商品を売買するのに必要な資格は?

第13回:リユース商品を売買するのに必要な資格は?        神山 智美(富山大学)

 

はじめに

第一生命保険会社が主催する2019年1月の「サラリーマン川柳2019」のベスト100の一つに、「メルカリで 妻が売るのは 俺の物」がありました。「メルカリ」で、子どもが父親の趣味の道具(ゴルフバッグや釣り用具等)を、持ち主の了解なしに、売りに出していた、という話はたまに聞きます。

また「ブランド品宅配買取サービス」なんていうのもありますね。ただし、期待した値段で商品が購入してもらないことも、買取値段に納得がいかず品物を取り戻したいと持っても取り戻せなかったということもあるようです。

それぞれがどのような契約になっているのかを、丁寧に確認する必要がありますね。特に、最初からチェック欄にチェックが一律に入っている項目は、該当しなければチェックを外す必要がありますし、約款を読んで了解しないと契約できないのであれば、約款に目を通すことは必須です。(約款をスクロールしなくても、チェック欄にチェックできるようになっているサイトが少なくないので、それは問題だと感じています。)

今回は、こうした中古品を売買する(購入し、販売する)のに必要な資格などについて、考えていきます。

 

リユースよりも定着しているリサイクル

リサイクル(recycle)」という言葉が普及して久しいです。思いつくのは、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、牛乳パック等でしょうか。別の物に生まれ変わっていますね。このようにリサイクルは、「再生利用」といわれており、回収した資源を「別のモノ」に作り替えて使うことです。具体的には、製品を粉砕・溶解・分解するなどして原材料化したり、部分や部品を用いて再資源化・再生利用したりすることを指します。そのため、「別のモノ」に作り替えるためのエネルギーが必要となります。

 

ちなみに、リサイクル業界は、いまや「資源再生」「再資源化」をする業界でもあり、ゴミ回収業者ではないとして、見直されています。日本でも、使用済みの自動車が、シュレッダーダスト化されて、再資源として利用されるようになってきています。このような再資源化技術を発展していくことも重要です。例えば、世の中に広まってきた太陽光パネルも、10年経過すれば効率が悪くなったとして廃棄されることでしょう。そうしたときに、確実な再資源化技術をもっていないと、各地に不要となった太陽光パネルがあふれることになります。こうした事態に備えて、技術開発をしている業界でもあります。

それに対して、「リユース(reuse)」は、そのままの形状で使うことです。思いつくものは何でしょうか?使用済みペットボトルに水を入れて水筒代わりにしている、というのも立派なリユース事例です(笑:メーカー推奨事例とはいえませんが。)。リユースは、かつては、一升瓶やビール瓶の空き瓶回収がありましたが、残念ながら今では酒類の瓶利用は減ってきています。紙パック入りのワインやお酒、缶入りワイン、一見して瓶のように見えるプラスチック容器等も登場していますね。運搬するにも、紙製、アルミ製やプラスチック製の方が、重くなく、割れづらく、便利ですね。

リユースの法律上の位置づけ

2000(平成12)年5月に、いわゆる循環基本法(正確には「循環型社会形成推進基本法」)が制定されました。これは、循環型社会の形成が標榜されるなかで、そのための筋道を示したものとされています。この法律の特徴は、廃棄物等の「循環的な利用(2条4項)」として取組むべき手法(再使用(2条5項)、再生利用(2条6項)、熱回収(2条7項))の優先順位を明確にしていることです。7条によれば、「再使用(リユース)>再生利用(リサイクル)>熱回収(燃焼させること)>適正処分」ということが明記されています。ですから、再利用は、より積極的に推進されねばならないといえます。

 

〔循環型社会形成推進基本法〕

(定義)

第二条

2 この法律において「廃棄物等」とは、次に掲げる物をいう。

一 廃棄物

二 一度使用され、若しくは使用されずに収集され、若しくは廃棄された物品(現に使用されているものを除く。)又は製品の製造、加工、修理若しくは販売、エネルギーの供給、土木建築に関する工事、農畜産物の生産その他の人の活動に伴い副次的に得られた物品(前号に掲げる物を除く。)

3 この法律において「循環資源」とは、廃棄物等のうち有用なものをいう。

4 この法律において「循環的な利用」とは、再使用、再生利用及び熱回収をいう。

5 この法律において「再使用」とは、次に掲げる行為をいう。

一 循環資源を製品としてそのまま使用すること(修理を行ってこれを使用することを含む。)。

二 循環資源の全部又は一部を部品その他製品の一部として使用すること。

6 この法律において「再生利用」とは、循環資源の全部又は一部を原材料として利用することをいう。

7 この法律において「熱回収」とは、循環資源の全部又は一部であって、燃焼の用に供することができるもの又はその可能性のあるものを熱を得ることに利用することをいう。

 

(循環資源の循環的な利用及び処分の基本原則)

第七条 循環資源の循環的な利用及び処分に当たっては、技術的及び経済的に可能な範囲で、かつ、次に定めるところによることが環境への負荷の低減にとって必要であることが最大限に考慮されることによって、これらが行われなければならない。この場合において、次に定めるところによらないことが環境への負荷の低減にとって有効であると認められるときはこれによらないことが考慮されなければならない。

一 循環資源の全部又は一部のうち、再使用をすることができるものについては、再使用がされなければならない。

二 循環資源の全部又は一部のうち、前号の規定による再使用がされないものであって再生利用をすることができるものについては、再生利用がされなければならない

三 循環資源の全部又は一部のうち、第一号の規定による再使用及び前号の規定による再生利用がされないものであって熱回収をすることができるものについては、熱回収がされなければならない。

四 循環資源の全部又は一部のうち、前三号の規定による循環的な利用が行われないものについては、処分されなければならない。

 

リユースのもう一つの位置付け

上記の循環基本法は、環境省が所管しています。なぜでしょうか?概して、環境省が想定するリユースは、廃棄物等を対象としていると考えられます。廃棄物等というと、いわゆる「ゴミ」のことなのですが、必ずしも廃棄物等=不要物というわけではありません。有用物である廃棄物等もありますし、不要物ですが循環的な利用が可能なゴミもあります。

他方、廃棄物等という表現ではなく、「中古品」という表現をすれば、私たちのイメージはがらりと変わります。有用品であってまだまだ使える物だから、使える人に使ってもらおう、これこそがリユースであり、循環的な利用とも言えますね。このように中古品をリユースする場合には、国家公安委員会および警察庁所管の「古物営業法」による規制の対象となっています。

同法は、盗品等の売買の防止をし、速やかな発見等を図るため、古物営業に対して必要な規制等を行うものです。窃盗等の犯罪防止をすることで、被害の迅速な回復を目的としています(1条)。古物の「売買」、「交換」、「委託を受けて売買」、「委託を受けて交換」を行う営業(2条2項1号)および古物商間の古物の売買又は交換のための市場(古物市場)を経営する営業(2条2項2号)には、同法に基づく許可を受ける必要があります(3条)。

ただし、古物競りあっせん業者(インターネットオークションサイトの運営者)(2条2項3号)は、3条の対象外です。

 

〔古物営業法〕

(定義)

第二条 この法律において「古物」とは、一度使用された物品(略)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。

2 この法律において「古物営業」とは、次に掲げる営業をいう。

一 古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの

二 古物市場(古物商間の古物の売買又は交換のための市場をいう。以下同じ。)を経営する営業

三 古物の売買をしようとする者のあつせんを競りの方法(略)により行う営業(前号に掲げるものを除く。以下「古物競りあつせん業」という。)

 

(許可)

第三条 前条第二項第一号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所(略)が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

2 前条第二項第二号に掲げる営業を営もうとする者は、古物市場が所在する都道府県ごとに公安委員会の許可を受けなければならない。

 

小規模のフリマを仮設店舗で開催する場合には許可は必要か?

この原稿は、4月に執筆しています。大学の隣には大きな公園があり、そこでは桜の木の下で、学生たちが小さなフリマを開催しています。新入生のためでしょう。これは許されるのでしょうか?

古物営業法2条2項1号、2号、3号をもう一度見てください。いずれの号も、「営業」としていますね。ですから、仮設店舗で年に1回程度主に新入生を対象に開催するフリマが営業に該当するかが問われます。

「営業」を、有斐閣法律用語辞典(内閣法制局法令用語研究会編)で調べますと、次のように書かれています。ここでは、①の意味ですから、同種の行為を反復継続して行うことという要件を満たす必要があります。すると、上記フリマは営業には当たらないと解釈できます。そのため、仮設店舗で年に1回程度主に新入生を対象に開催するフリマを開催する場合には、許可を取得する必要はありません。

 

「有斐閣法律用語辞典」(内閣法制局法令用語研究会編)

【えいぎょう】営業

営利の目的をもって同種の行為を反復継続して行うこと

②一定の営利を目的とする事業のために結合した動産、不動産、債権、債務など有機的な財産の集合体。得意先、仕入先、営業上の秘訣など経済的価値のある事実関係も含む。広義の営業財産。

以上