「ビジネスに関わる行政法的事案」第50回 河原等のBBQ人気スポットの有料化

第50回 河原等のBBQ人気スポットの有料化       神山 智美(富山大学)

 

はじめに

今年のゴールデン・ウィークはいかがお過ごしだったでしょうか?「たまった仕事こなしてました」なんて味気ない答えをする人もいらっしゃるでしょうが、それなりにコロナ禍での過ごし方にも慣れてきて、少しお出かけしたという人が多いのではないでしょうか。

今年のG.W.のニュースで目に入ったのは、「人気BBQスポット、一部有料化」というニュースです。有料化すると、利用者が減るようで、駐車場も会場も密にはなりません。他方、有料なことを当日に知って、「お金かかるんならやめよう」と思う人もいるようです。となると、「値段次第」ということになるかもしれませんね。

ここで有料化になっている、または有料化にしたいので実証事件をしているのでは、「河原(河川敷)」です。有料にすると、「密」は防げるようです。また、利用者が一定程度に保たれて、収益も出るので、それらのお金を周辺環境の「保全」に充てることも可能になりますし、もちろんゴミの管理もしやすくなるようです。

こうした河原の有料化には、法的な問題は生じないのでしょうか?

大阪・道頓堀裁判:大阪地判昭和51年10月19日(判時829号13頁)

そもそも河原は誰のものでしょうか?今では、一般的には、国土交通省の所管といえます。しかしながら、すべてが一様に国土交通省の有する土地でありすべての立木の所有権も同省に帰するというわけではありません。部分的に、土地を所有または賃貸して事業をしている、または耕作等している人もいますし、墓地もあります。そうすると、私人の権利性が及んでいる土地もあるといえます。

そうしたところで、「大阪・道頓堀裁判」は、原告が、道頓堀川の河川敷地の所有権を確認することを訴えた事案です。

時代は、慶長17年(1612年)のことになります。およそ400年前のことですね。

 

原告の主張は、「道頓、および原告らの先祖である初代安井九兵衛(後に道卜と号す)、その兄である治兵衛定清、ならびに平野藤次らが中心となつて、豊臣家の許可を得たうえ、元梅津川と呼ばれていた小溝を拡げて上下二八町にわたり堀川(当初南堀川と称せられた)となし、かつ沿岸地域を宅地化して町地となすべく、右の者らの自費を投入し・・・」と、原告の祖先が道頓堀川の河川敷を開発して自らの所有権を得たものであるとして、その子孫として河川敷の所有権を有するとします。

それに対して、裁判所は、「近世においては一般的にいつて現行法の抽象的、観念的、包括的、絶対的な土地『所有権』と完全に同一視しうる権利概念は存在しておらず(すなわち所有権に類似した近世の『所持権』なる権利も、前記のように一部観念化、抽象化、絶対化する場合もあつたが、それは不完全かつ未成熟であつて、到底、現行法の所有権概念と同一視しうるには至らないものといわざるをえない。)、現行法の土地所有権につらなる土地に対する権利は、前述の地租改正事業の過程において、近代的土地所有制度が整備されるに伴い登場し、確立してきたものであり(これを近代的土地所有権という)、そして、右の近代的土地所有権は近世における土地に対する私人の権利が右の過程において近代的権利に高められたものであつて、結局個々の土地に対する近代的所有権は近代的土地所有制度が確立した段階において、当該土地に対し、従来から所持権等の所有権に類する強度の権利を有していた者が取得するに至つたものと解するのが相当である。」とします。

つまり、裁判所は、原告の主張を認めませんでした。その理由は、近世においては一般的にいつて現行法の抽象的、観念的、包括的、絶対的な土地「所有権」と完全に同一視し得る権利概念は存在していないからであるとしました。というのも、現行法の土地所有権に連なる土地に対する権利は、明治初年の地租改正事業の過程において、近代的土地所有制度が整備されるに伴い登場し、確立してきたものであるので、個々の土地に対する近代的所有権は近代的土地所有制度が確立した段階において、当該土地に対し、従来から所持権等の所有権に類する強度の権利を有していた者が取得するに至ったものと解するのが相当である、と考えたようです。

では、現代ではどう考えられるのか?―自由使用とは―

河川も河川敷も公共のものですから、「自由使用」と言って、原則として誰もが自由に利用することができます。「自由使用」とは、本来一般公衆の自由な使用に供するものということです。すなわち、釣り、散歩、水遊び、バーベキューなどで利用する場合には、河川法の許可等は必要のないということになります。
ただし、「自由使用」であっても、他の河川利用者に迷惑をかけたり危害を及ぼしたりというおそれがある行為とならないよう注意をしてください。また、利用者が競合する場合は、利用者間で調整を行うことも、もちろん必要になります。なんでもかんでも自由に使えるということではありません。

なお、「自由使用」に当たるものであっても、河川公園、運動場などに整備されていて、施設管理者が使用許可を求めたり、使用上のルールを定めたりしている場合がありますので、ご確認をされるようお願いします。

ちなみに河川に関して許可が求められる行為には、以下のものがあります。河川の水を取水すること(河川法第23条)、河川を排他・独占的に使用すること(同法第24条)、河川の砂やヨシ等を採取すること(同法第25条)、河川に工作物を設置すること(河川法第26条)、河川の土地の形状を変更すること(同法第27条)、竹木の流送又は舟若しくはいかだの通航(同法第28条)等です。

そのため、″魚釣り自体″は、河川法では、原則として、制限されていません。ただし「釣り台」や「釣りの仕掛」を設置する行為は河川法で制限する「河川での工作物の設置」にあたる場合がありますので、注意が必要になります。

また、魚釣りに関して、河川法以外の法律により利用が禁止される主なものとして、禁漁区での魚釣りがあり、これは漁業法違反となります。また、河川に漁業権が設定されている場合は、魚釣りには入漁権の取得が必要となる場合があります。詳しくは各県の漁業担当部署にご確認下さい。

〔河川法〕

第23条 河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。ただし、次条に規定する発電のために河川の流水を占用しようとする場合は、この限りでない。

第24条 河川区域内の土地(略)を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。

第25条 河川区域内の土地において土石(砂を含む。以下同じ。)を採取しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。河川区域内の土地において土石以外の河川の産出物で政令で指定したものを採取しようとする者も、同様とする。

第26条 河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。河川の河口附近の海面において河川の流水を貯留し、又は停滞させるための工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者も、同様とする。

第27条 河川区域内の土地において土地の掘削、盛土若しくは切土その他土地の形状を変更する行為(前条第一項の許可に係る行為のためにするものを除く。)又は竹木の栽植若しくは伐採をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽易な行為については、この限りでない。

第28条 河川における竹木の流送又は舟若しくはいかだの通航については、一級河川にあつては政令で、二級河川にあつては都道府県の条例で、河川管理上必要な範囲内において、これを禁止し、若しくは制限し、又は河川管理者の許可を受けさせることができる。

 

河川敷スポットの有料利用化は可能か?

では、この「自由使用」の河川敷に、駐車場の有料化や、入場の有料化をすることは可能なのでしょうか?

まずは、この「有料化」をしたい自治体や地域の人たちの声を聴いてみましょう。騒音や、ゴミのポイ捨て等のマナーの悪さが原因のようです。そのため、地域の人は、有料化に賛成している人が少なくありません。

 

しかし、区域を限定しての有料化をするためには、河川法上の許可を取得する必要があります。具体的には、河川区域内の土地(略)を占用(河川法第24条)および管理施設の設置(同法第26条)などが必要になるでしょう。

そのためには、これらの条文に基づく占有許可を管理団体が取得して、その団体に登録した利用者が登録料を支払うような仕組みにすることが必要になります。加えて、本来自由使用である河川敷を有料化して、一部の人の利用に限定するわけですから、営利目的ではないことも求められます。

結び

冒頭で「値段次第」ということを書きましたが、どれくらいの値段設定であれば、利用者の許容範囲なのでしょうか?また、環境保全をしていくために必要な金額といえるのでしょうか?このあたりの「妥当な利用料」の模索は続きそうです。

以上

 

(参考)

「人気BBQスポット、一部有料化でGWの利用激減…トラブル減り住民は歓迎・業者は困惑」読売新聞2022年5月8日19:41
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/e4-ba-ba-e6-b0-97-ef-bd-82-ef-bd-82-ef-bd-91-e3-82-b9-e3-83-9d-e3-83-83-e3-83-88-e3-80-81-e4-b8-80-e9-83-a8-e6-9c-89-e6-96-99-e5-8c-96-e3-81-a7-ef-bd-87-ef-bd-97-e3-81-ae-e5-88-a9-e7-94-a8-e6-bf-80-e6-b8-9b-e2-80-a6-e3-83-88-e3-83-a9-e3-83-96-e3-83-ab-e6-b8-9/ar-AAX276X?ocid=uxbndlbing&msclkid=c6a58673cecf11eca49abe7b8cbf2a4f(2022年5月8日最終閲覧)。